世界最高精度「年差±1秒」の”Caliber 0100″搭載腕時計が2019年秋に発売

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世界最大規模の時計・宝飾品の見本市であるバーゼルワールドが今年2019年も3/21~26までの期間で開催され、多数の新作モデルが発表されました。

それら多数のモデルの中で、個人的に最も気になったのは、世界最高精度「年差±1秒」を達成したシチズンのエコ・ドライブ“Caliber 0100”を搭載した腕時計です。

超高精度「年差±1秒」Citizenの”Caliber 0100″

“Caliber 0100″は、昨年のバーゼルワールド2018でコンセプトモデルとして懐中時計に搭載された形で既に発表されていた訳ですが、数量限定かつ特定店のみの取り扱いながら腕時計としていよいよ2019年秋に市販されることになりました。

年差±1秒ということは、1年は31,536,000秒=365(日) x 24 (時間) x60 (分) x60(秒)  なので、1/31,536,000。三千百五十三万六千分の一!の精度。

なんと±0.000003%の誤差ということになりますね。まあ、よくわかりませんが、とにかくすごいことだけは確かです。

もちろん、電波修正時計やGPS修正時計であれば、理論的な誤差はほぼ0秒となる訳ですが、それはあくまでも他からの時刻情報に依存したものであり、正常に毎日時刻情報を受信しているという前提。電波修正時計やGPS修正時計に搭載されているムーブメント自体の精度は通常のクオーツ時計と同じですから、時刻情報をしばらく受信出来なければ、誤差はすぐに1秒を超えてしまうことでしょう。

一方、”Caliber 0100″は、標準電波送信所やGPS衛星からの時刻情報に依存せず、全くの自力で年差±1秒という超高精度を達成していることに大きな意味があるといえます。

しかも、光発電エコ・ドライブでありフル充電時は約6か月(パワーセーブ作動時は約8か月)というロング・パワーリザーブでもあります。

標準電波送信所が無くなっても、全てのGPS衛星が破壊されても、光がある限り正確な時を刻み続けてくれる

標準電波送信所やGPS衛星を含め地球上の全てのインフラが使用不能になっても、光さえあれば年差±1秒という極めて正確な時を、これ単体のみで長期間にわたって刻み続けることが出来ます。

時計の本質が正確な時を刻み表示することにあるならば、正に腕時計の中の腕時計であります。The Wristwatchですね。今後、世界に腕時計を一つしか残すことが出来ないとしたら、これしかないのではないかとさえ思います。

たとえ大地震が発生して標準電波送信所が稼働しなくなっても、あるいは宇宙嵐・太陽嵐によってGPS衛星が故障し時刻情報を発信出来なくなったとしても、”Caliber 0100″ならば単体で正確な時を刻み続けることが出来る。

素晴らしい。例えば、第三次世界大戦で世界中のあらゆるインフラが破壊されても、つまりあの未来少年コナンのような世界に一人で放り込まれたとしても、”Caliber 0100″を持っていれば正確な時刻を知ることが出来る。他に頼るものの無い世界で、それ自体で圧倒的に高精度なモノを持っているというのは大きな安心感につながることでしょう。

本当に年差±1秒を達成できるのか?

ただ、少々心配しているのは、様々な使用条件下で年差±1秒を本当に達成できるのかというところ。当然のことですが腕時計は装着した人の日々の活動から受ける振動や衝撃、時には急激な温度変化や湿度変化、そして気圧変化などにも晒されます。

もちろん、それらのことも想定して通常のクオーツムーブメントに搭載されている音叉型水晶振動子の250倍以上にあたる8.4MHzという高い周波数を持つ「ATカット型水晶振動子」を採用するとともに、1分に1回の温度変化モニタリングを行い温度変化から生じる誤差を補正する機能や衝撃検知機能・針自動補正機能も搭載されています。

しかし、たとえ実験室内では目標精度が達成できたとしても、実際の使用環境の下で同じ精度を達成するのはより難易度が高くなることでしょう。

それでも昨年のコンセプトモデル発表からの1年間で市販化に踏み切った裏には技術者の様々な努力や地道な作業があったことと推察します。一方で、それはさぞかしやりがいのある仕事でもあり、そういう仕事に携わることが出来るのは技術者冥利に尽きるのではないかとも思います。今後、市販され実際に使用されて、その真価が発揮されることを期待しています。

市販される3モデルは、ケースやバンド、ダイヤル素材の違いで以下のとおり。いずれも数量限定であり、クオーツ時計としてはかなりの高額モデルといっていいでしょう。

商品番号 ケース バンド ダイヤル 価格
AQ6010-06A

(100本限定)

18Kホワイトゴールド ワニ革 アイボリー 1,800,000円+税
AQ6021-51E

(500本限定)

スーパーチタニウム

(デュラテクトα)

ブラック 800,000円+税
AQ6020-53X

(200本限定)

白蝶貝

(上記写真はシチズンのウェブサイトより引用)

値段が値段なので、個人的には残念ながらどのモデルも購入するのはちょっと厳しい感じですが、お金に余裕があり性能とデザインの両方ともに気に入った方なら買っても後悔しないのではないでしょうか?年差±1秒を達成した世界で唯一無二のモデルであり、所有満足度は高いと考えます。

以下はちょっと古いですが、シチズン時計の社長を務めた梅原誠氏の著作。世界最高精度のクオーツ腕時計を作り上げたシチズンという会社のこれまでの歴史に興味のある方には面白いでしょう。

セイコーの輝かしい歴史と比べ、シチズンは少し影が薄いような気がしないでもありませんが、そんなことはありませんよね。

シチズンの最高峰といえばザ・シチズン。土佐和紙を文字板に採用したモデル(AQ4030-51E)もあるんですね。これは一度実物を見てみたいものです。Caliber0100搭載モデルよりはずっと安いですが、簡単に買えるほど安くはありません。年差±5秒ですが、パーペチュアルカレンダー付だし、カレンダーのないCaliber0100より実用上はむしろこちらの方が便利かもしれません。

AQ4030-51E

グランドセイコーの9Fクオーツも確かに良いのですが、パーペチュアルカレンダーではないし、エコ・ドライブと違って電池交換が3年毎に必要となります。ブランド力ではグランドセイコーがザ・シチズンを圧倒していますが、実用性という観点からはCaliber0100を除いた現行モデル同士の比較であっても、ザ・シチズンの方がかなり上のような気がします。

セイコーの奮起を期待します

セイコーが世界最高峰クオーツと自称するキャリバー9Fも、1993年の登場から今年で既に26年目。瞬時に切り替わる「瞬間日送りカレンダー」や機械式時計のような重い針を正確に回すための「ツインパルス制御モーター」、そして機械式時計のように精度調整可能な「緩急スイッチ」など様々なメカニズムを搭載した9Fクオーツが、未だに最高レベルのクオーツであることは間違いないと思います。

ただ、1993年以来、9Fには特筆すべき進化は無いようにも見えます。あえて言えば、2018年にGMT針を搭載した9F86を出したことでしょうか。

最近のスプリングドライブや機械式ムーブメントへの力の入れ具合と比べると、セイコーを世界のセイコーたらしめてきたはずのクオーツムーブメントが随分と疎かにされているように見えるのは気のせいでしょうか?

世界初のGPSソーラーウォッチであるアストロンはクオーツ腕時計の一つのバリエーションとしては素晴らしいと思いますが、ムーブメント単体での精度追求も忘れないで欲しいところです。

今回、シチズンの”Caliber 0100″搭載モデルを見て、本来なら、こういった腕時計はセイコーが最初に出すべきではないかと感じてしまいました。世界初の市販クオーツ腕時計を開発したセイコーこそが出すべきであったと。

セイコーの技術者の方々は、シチズンの発表を見て、さぞかし悔しがっているはず、ですよね?

セイコーファンの一人として、セイコーがこれに奮起して”Caliber 0100″を超える真に世界最高のクオーツムーブメントを開発してくれることを希望します。

SBGV223

もし、自分がグランドセイコーのクオーツモデルを買うとしたらSBGV223ですね。グランドセイコーらしいデザインで、存在感のある少し大きめの40mmケース。

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